火事で燃えた『まことちゃん19巻』と後悔のお団子

小学1年生の冬、僕の自宅は火事に見舞われました。

 

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※この記事は、投稿日時点での法律・状況等に基づき執筆しています。

胸がドキドキするほど怒られた日

その日はひどく母に叱られたことを覚えています。

でも、何で叱られたのかは覚えていない。

ただかなりきつく叱られたのは確かで、母もやり過ぎたと思ったのでしょう、近所の本屋さんでマンガを買ってくれました。

当時の僕は、将来漫画家になりたいと言い出すほどマンガにハマっていて、母も当然それを知っていました。

怒ってゴメンねと、本屋さんに連れて行ってもらい、僕は「まことちゃん19巻」をチョイス。

明日「まことちゃん19巻」を読むのを楽しみに、僕はおばあちゃんとおばあちゃんの部屋でその日は寝ました。

(おばあちゃんっ子ではありましたが、その頃はひとりで寝るようになってたはず。しかし、その日に限ってはなぜかおばあちゃんと寝ました。)

 

ただただ眠い・・・

夜中、突然父に起こされ、おばあちゃんの部屋から移動させられました。

僕はとても眠くて、何度もおばあちゃんの部屋に戻りたいと父と母に懇願しました。

でも、聞き入れてもらえません。というか、こちらの話が耳に入っていないようです。

家族全員の寝室は2階にあり、このときもみんな2階にいました。

なんか階段の下のほうが煙っています。

僕は眠いので引き続きおばあちゃんの部屋に戻りたいと言い続けていました。

 

ポッチャリな母が空を飛ぶ

そうこうしているうちに、母が窓を開け、手すりにおんぶ紐をくくりつけスルスルと降りつつ、隣の家の屋根に飛び移りました。

弟、僕の順で、母に抱えられ、窓から隣の屋根に移されます。

結構な肥満体質だったはずの母ですが、まさに火事場のナントカヂカラ、このときの母の振る舞いは、今となっては伝説ように近所で語り継がれています。

そして、屋根の上を歩きながら(隣の家は平屋でした)、僕はあることに気が付きます。

 

「僕のうちが燃えている・・・」

 

炎を見て、ようやくわかったのです。自分の家が火事になったということを。

火事って自分の身にも降りかかる出来事なんだなぁ〜と、意外と冷静に事実を受け止めたことを覚えています。

見知らぬ大人の人に屋根から抱っこで降ろしてもらいました。皆さんとても優しかった。

 

一睡もできない交番での夜

無事に逃げることができた僕たちは、どこに行ったかというと、パトカーで交番に行きました。

「初めてパトカー乗った!」と、少しだけ喜んでたような気もします。

あとで知ったのですが、煙を吸い込んだとかの理由でおばあちゃんだけは病院へ行ったようです。

交番では何をしたかというと、僕と弟は寝てました。

僕と弟と母は、交番の畳の部屋に案内され、父は別室へと案内されました。

別々に事情聴取がなされたわけです。

真夜中だったため、おまわりさんが布団を1組敷いてくれて、僕たちは二人でそこに潜り込みました。

となりでは母がおまわりさんから事情聴取を受けています。

僕たちは眠れるはずもなく、布団の中でキャッキャ、キャッキャとフザケていました。

 

まっ黒焦げの50円玉

全焼でした。The 全焼。燃えちゃったものもたくさんありましたが、アルバムとか僕の貯金箱とか、無事に救出されたものもあります。

しばらくまっ黒焦げの50円玉を記念に持っていたのですが、結局使っちゃいました。何に使ったのかまったく覚えていませんが、そんな黒焦げの50円玉でも無事に使えました。

 

後悔のお団子

火事のあと、1週間近くは学校を休んだんじゃないかと思います。

久々の登校、待っていたのはみんなからのお手紙でした。

記憶が定かではないのですが、他のクラスも含め1年生全員からいただいたような気がします。

照れくさいやら、嬉しいやらでした。

担任の先生からは、みんなにお礼の手紙を書くように言われました。

でも、当時の僕は極度にシャイで、人に見られること前提の文章を書くことが、どうしてもできませんでした。

それで書いたのが、お団子の絵。

画用紙に丸をいくつか書いて、茶色の色鉛筆でグリグリ塗って。

励ましのお手紙のお礼に、空想のお団子をみんなに。。

本当に嬉しかったので、もっとちゃんとお礼の気持ちを伝えたかったのですが、なぜかそんな絵しか書けませんでした。漫画家志望のくせに。

小学校の6年間、もしかしたらそれ以上の期間、このことについては後悔することになります。

 

東京・吉祥寺の街で

30代のほとんどの期間、僕は吉祥寺にある会計事務所に勤めていました。

吉祥寺の街によく行かれる方ならわかると思うのですが、街を歩いているとよく楳図かずお先生に遭遇します。

僕も本当によく先生をお見かけしました。

何十回、何百回と先生をお見かけするうちに、僕にある感情が生まれてきました。

 

先生のサインが欲しい、あの「まことちゃん19巻」に・・・

 

当然あのときの「まことちゃん19巻」は火事で燃えてしまっているので、古本の「まことちゃん19巻」を買い、マジックペンとともにカバンの中にいつも入れていました。

 

そして、2014年、ついにその時が来ました。

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楳図先生はニッコリとこころよくサインに応じてくれました。

街なかでひきとめてしまったこともあり、特に火事のエピソードなどを話すことなく、サインのお礼だけ言うのが精一杯でした。

 

 

こうして、僕の火事にまつわる物語は、30年以上の時を経て、タイムマシンの穴がスーッと閉じるような感じで、吉祥寺の駅ビル中でフィナーレを迎えることができました。

 

 


【サンプラザ前川くんのつぶやき】

昨夜は、Yo La Tengoと坂本慎太郎のライブを観にO-EASTへ。

音楽友達もでき、いい夜になりました。

 

【1日1新】

渋谷ストリーム

坂本慎太郎のライブ

 

【長男(7歳)のマイブーム】

長靴

 

【次男(1歳8ヶ月)のマイブーム】